看護師の意思決定支援に必要なスキルとは?行動経済学を学ぼう!!

人間関係

こんにちは!!こじかナースです。

看護師は患者や家族の意思決定の場面に立ち会うことが多いですよね。

特に、本人の意識がなく、家族が意思決定をする場面は一番難しいと感じています。

行動経済学を学ぶことで患者や家族の思考を理解することが出来ます。

明日からの看護に生かせることを願っています!!

行動経済学とは

行動経済学とは、人間の心理的・感情的な側面もとに分析を行う経済学のことです。
「必ずしも合理的な行動を取らない人間」を前提に研究が進められている分野です。

行動経済学の説明でよく用いられる例をご紹介します!

状況によって判断が変わる例

コイントスのくじをするときにどちらの方法を選択しますか?

①表がでたら2万円もらえ、裏が出たら何ももらえない
②参加しない場合は、無条件に1万円もらえる

どうでしょうか?②の方を選びませんか?
このような条件では、②の参加せず確実に1万円もらうを選ぶ人が多いです。

しかし、条件を変えるとどうでしょうか?

③コインを投げて表が出たら2万円失い、裏がでたら何も失わない
④確実に1万円失う

どうでしょうか?③を選びたくなりませんか?
確実に失うよりかは、③の参加して失わない可能性に希望を持ちませんか?

なぜ人は得するときは安全策をとり、損をするときにはリスクのある行動を取るのでしょうか?
行動経済学では「プロスペクト理論」といいます。
このような不合理的な行動を「行動経済学」では説明が出来るのです!!

そして、「行動経済学」は医療現場においても活用できます。
実際の事例をもとに意思決定にかかわる人間の思考を考えていきましょう。

医療現場でみられる行動経済学

私が、実際の現場で体験したことをもとに、行動経済学の観点から解説していきます。

事例

心停止状態で救急搬送され、蘇生処置や緊急手術を行い一命をとりとめたA氏。しかし、すぐにまた状態が悪化したため、A氏の家族へ病状説明を行ったときにの場面です。

医師「積極的な治療を続けてきましたが、心臓の機能が落ちてきています。これ以上点滴などの治療を続けるとはさらに心臓に負担をかけてしまいます。蘇生処置をしたとしても本人の苦痛を増やすだけになってしまうかもしれません。ですので、対症療法に切り替え本人に苦痛がないようにしてそのまま自然な形で様子を見ていくのがよい思われますがいかがでしょうか?」

家族「ここまでやってきたのに、、、。心臓の機能が戻る可能性はゼロではないんですよね?でしたらもう少し治療を続けていただきたいです。突然のことでどうしていいか、、、。もう少し経過をみて判断させてもらえませんか?」

医師「、、、、。分かりました。もう少し治療を続けていきますが、状態が急変する可能性が高いので、早いうちに返答を聞かせていただければと思います。よろしくお願いします。」

 
ここでの家族の言動には「3つの行動経済学」の考えがあります。

サンクコスト・バイアス

「ここまでやってきたのに、、、」という言葉には、サンクコスト・バイアスが働いていると考えられます。

サンクコスト・バイアスとは、「すでにお金や労力、時間など支払ってしまったという理由だけで、さらに損がでるとわかっていることに手を出し続けてしまう心理」のことです。
医療では治療を続けてきたにも関わらず、効果が表れなかったとしても、いままでかけてきたお金や労力などと比較し、まだ成果が出るまで続けたいと意思決定にあらわれてきます。


今回の場合、蘇生処置や緊急手術というつらい治療をしたA氏が一命をとりとめました。そのため、つらい治療をしてきたのに途中でやめてしまったら苦労が報われないと家族が感じている可能性があります。

プロスペクト理論:損失回避

「心臓の機能がもどる可能性はゼロではないんですよね?」という言葉には、プロスペクト理論の損失回避が働いていると考えられます。

損失回避とは「損失が確定してしまうことを避けようとする」ことです。
損失をすることは、得をすることよりも精神的負担がおおきいため、避けるようになっています。

今回の場合、「治療をやめてしまうこと」=「死んでしまう」ということが容易に想像がつきます。
大切な人がいなくなるのは精神的ダメージがかなり大きいです。ましてや、「突然のことでどうしていいか、、、。」と家族が死への受け入れもできていないと考えられます。

治療に対する効果が低いといわれても、可能性がゼロでなければ少しでもリスクを取ってしまうという人間の心理が働いていると考えられます。

現在バイアス・現状維持バイアス

「もう少し経過をみて判断させてもらえませんか?」という言葉には現在バイアス・現状維持バイアスが働いていると考えられます。

現在バイアスとは「現在の事柄を最高に価値あるものと評価する」ことで、現状維持バイアスとは「現在を基準点として、何かを変更することを損失に感じてしまう」ことです。

今回の場合は、現在はまだ生きているという思いから、生きていることが最大の価値になっています。治療を継続して少しでも回復の兆しがないか希望を持っていたり、治療を中断することで死に向かってしまうという損失感から行動が起こせない状態にあると考えられます。

意思決定支援の方法

以上を踏まえて、家族への意思決定支援のポイントは3つあります。

本人や家族の思いを傾聴する

まず一つ目のポイントは、「本人や家族の思いを傾聴する」ことです!

サンクコストバイアスが働いている場合、過去のことを回想してしまいます。しかし、過去は変えられないため、これから先のことを考えていくことが大事になります。

入院前の本人の思いを家族へ尋ね、本人の気持ちを尊重する気持ちがあることを伝えます。そして、家族がいま何に対して不安や悩みを抱えているか理解に徹します。

まずは、なにが意思決定を困難にさせてしまっているのかアセスメントしていきます。

これから先のことを理解してもらう

次に大事なポイントは「これから先のことを理解してもらう」ことです!

医療関係者でない限り、この先どうなっていくのか説明があったとしてもすべてを理解できているわけではありません。

病状説明の内容で理解できなかったことを尋ねます。
そして、理解できなかったことについては補足するような形でプラス面やマイナス面を伝え意思決定を促していきます。

一般的な選択を伝える

そして最後に大事なポイントは「一般的な選択を伝えること」です!

家族は患者本人の生死を判断する立場にあるため、自分の選択によって死に向かっていくということはしたくないはずです。生きて帰ることを望んでいるので、現状維持バイアスがかかってしまうのも無理はありません。

そのため、医療者の考えや一般的な考えを伝えることで家族の意思決定の背中を押すことが大切です。

・「これ以上つらい思いをさせたくないと考えている方は多いですね。」
・「本人が苦しみたくないと仰っていたのなら、個人的には苦しくないようにするのが一番かと思います。」

といったことを家族へ伝えることで、家族の意思決定を擁護することができます。家族の意思決定の負担を減らすことが出来るのです。

最後に

A氏の家族と上記のことを意識しながら関わり、病状説明された日に治療はせず対症療法していくということになりました。

そして、次の日にA氏は亡くなってしまいました。
家族は「ありがとうございました。昨日のうちに考えといてよかったです」と言っていただけました。

意思決定支援に正解はないですが、家族の心理や行動を理解しておくことで、自分がどのように患者や家族へ接していけばよいか方向性が決まると思います。

まとめ

  • 行動経済学は、医療にも使える
  • 行動経済学で不合理的な行動の意味が理解できる
  • 行動経済学で、意思決定支援の方法がわかる

意思決定支援のスキルとして、行動経済学を学ぶことはとても大事です。
納得した意思決定が行えるよう日々気を付けながら実践していきましょう!!

今回参考にした本になります!急性期以外にもがん治療の場面や医療者のバイアスについても書かれています。意思決定支援について興味を持った方は必読の一冊になると思います!ぜひこちらをご覧ください。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

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